2019年10月15日 更新

キャンペーン

夏の怪談コンテスト応募作品NO4

ぱどにゃんこ夏のキャンペーン 最恐「実話怪談コンテスト」応募作品を一挙ご紹介!

 

投稿者:タケシ猫

日本でもお馴染みになったハロウィンですが、これはそんな日に起きた出来事です。

 

都内の大学に通うM君は毎年ハロウィンに仮装して渋谷の街に繰り出します。いつもと違った自分になれるのが楽しいのと同時に、いろんなひとと知り合える楽しさもあるからです。

ある年のハロウィンの日のこと、M君は例によって仮装して渋谷の街を練り歩き、その日限りの狂奔の夜を堪能しました。そろそろ帰ろうと思ったとき、モヤイ像の前に腰かけている年配の男性が目に留まりました。その男性は青白い肌で精気が無く、まるで幽霊のようでした。随分気合いの入った仮装だなと感心したM君は早速声をかけました。

 

 

「いやいや仮装じゃないよ」
男性は力なく笑いました。

「何年か前の十月三十一日に起きた出来事を思い出しちゃってね」
話に興味を持ったM君は詳しく聞こうと、男性を近くのバーに誘いました。タクシーの運転手をしているというD氏は、バーでM君に過去の体験を語って聞かせました。

 

「渋谷で親子連れを拾ってね。陰気な親子だったよ」
D氏の言葉にM君は、これはタクシーにありがちな幽霊譚だとピンと来ました。

「それでどうしたんですか?」
M君の前のめりな問いかけに

「どうもこうもないよ」
とちょっと引き気味にD氏は答えました。

D氏が飲みながら語った話を短く集約すると、
『その親子の指定した通りにカーナビを入力して車を走らせたら、危うく崖から落ちて死にそうになった』というものでした。

「そういうことって本当にあるんですね」
怪談好きなM君は本物のタクシー運転手の幽霊話が聞けたことが嬉しくて感動すら覚えました。
ふと気がつくとD氏はカウンターにつっぷして寝息をたてていました。M君は怪談が聞けたお礼に奢ろうと思い、お店のひとに二人分のお会計を申し出ました。

 

 

「お客さん、ずっとひとりで飲んでましたよ」
店員の言葉に驚き、M君は

「いやだってそこに」
と言いながらカウンターを指差しました。

カウンターにはD氏の姿はありませんでした。

 

M君が後日図書館で新聞記事のデータを調べたところ、何年か前の十月三十一日にタクシーがあやまって崖から転落し、運転手が亡くなった記事を発見しました。記事に載っていた運転手の顔写真は、紛れもなくD氏のものだったそうです。

親子連れの幽霊に誘われ崖から落ちたD氏は、自分がもうこの世にいないことが信じられず、いまでもハロウィンの夜を彷徨っているのでしょうか。

 

1 件

関連する記事 こんな記事も人気です♪

この記事のキュレーター

ぱどにゃんこチェック ぱどにゃんこチェック