2019年10月15日 更新

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夏の怪談コンテスト応募作品NO32_「今度は助けるの?」

ぱどにゃんこ夏のキャンペーン 最恐「実話怪談コンテスト」応募作品を一挙ご紹介!

 

投稿者:たこちゃん

『今度は助けるの?』

今度は助けるの?

 これは一九九十(昭和二十五)年ごろ、上天草の高校の二十代後半の音楽科教員から聞いた話である。彼女は非常勤講師だったが、若い教師の集いによばれて、酒も進んでリラックスした感じにほろ酔いに見えた。  

ふだんはあまり冗談も言わないタイプだった。だから彼女からこのような話を聞くのは初めてだった。

話はこうである。  

ある夫婦がいた。夫婦には昨年待望の子どもが生まれた。ふたりとも喜んだのは言うまでもない。しかし生まれてからそれは失望に代わってきたのであった。なぜならその子はかなり重大な障害をもっていたのであった。具体的なことはわからないが、両親の庇護がないと生きてはいけないような深刻なものだった。  

母親は心理的に追い込まれ、暗い毎日を過ごしていた。それを心配した夫はきばらしに「どこか外に行こう」と誘った。そして行ったところはある美しい湖。湖畔にボートがあった。ふたりはボートに乗った。赤ちゃんは妻が抱いていた。夫は漕いでいた。あるところまで行って、夫は何を思ったか立った。するとボートはバランスを欠いて大きく傾いた。そのとき妻と赤ちゃんが同時に船外に投げ出された。泳げる妻はかろうじてボートにつかまった。赤ちゃんがいない。夫は潜った。そして湖底に向かって沈む赤ちゃんの姿を見た。結局、赤ちゃんは亡くなった。  

その後夫婦は新しい赤ちゃんを授かった。今度は健常な赤子だった。夫婦は再びボートに乗った。そしてまた赤ちゃんは海に投げ出される。夫は潜って赤ちゃんを助け上げた。すると赤ちゃんは「今度は助けるの?」と言ったという。

 

 

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