2019年10月15日 更新

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夏の怪談コンテスト応募作品NO22_旧トンネル

ぱどにゃんこ夏のキャンペーン 最恐「実話怪談コンテスト」応募作品を一挙ご紹介!

 

投稿者:ゆったん

旧トンネル

大学2年の夏、教授が地元で有名な旧トンネルの怪談話をしてくれました。夜中に女の霊が出るというよくある内容でしたが、教授は

「これは本当の話だぞ。夜中に旧トンネルで写真を撮ってきたら、Aをあげよう。」
と言いました。


それから暫くして、友人Yが
「俺が車を出すから旧トンネルに写真を撮りに行こう。」

と言い出しました。旧トンネルは大学から車で20分ほどの所にあり、面白半分で行ってみようということになりました。

旧トンネルは山の中の、街灯もない暗い道をうねうねと登った先にあり、なかなか怖い雰囲気だったのを覚えています。
それでも夜中にホラースポットに行く、という妙な興奮で車内は大いに盛り上がりました。

旧トンネルに着いたのは夜中の1時を少し回った頃だったと思います。旧トンネルはとても静かで、本当に幽霊が出そうな薄ら寒い感じでしたが、
集合写真を撮る間、特に変わったことは起きませんでした。

「やっぱり幽霊なんていないんだな。」

皆で笑いながら大学に戻ろうと車を走らせていると、山道を降りる直前で、小学生位の男の子がこちら、つまり旧トンネルの方に向かって歩いてくるのが見えました。
Yは慌てて車を止め、


「君、家に帰るなら乗せてってやろうか?」


と声をかけました。すると男の子は驚いたようにぱっと顔を上げました。くりくりした目が可愛い男の子でした。
男の子は少し考えてから、


「知らない人について行っちゃダメって言われてるから。」

と言いました。そして、

「僕、毎日ここ歩いてるから平気だよ。」


と言うと、また旧トンネルの方に向かって歩き出しました。仕方なく車を発進させた後、一緒にいた友人Mがぽつりと、


「こんな時間にあんな小さい子がなんで1人で歩いてるんだろう。」


と言いました。車内の時計は2時半を示していました。


「それに、あの道に家なんてなかったし。」


その瞬間、運転していたYは「あっ。」と声をあげると、急に車のスピードを上げました。


「どうしたの?」


と聞いても何も言わず、どんどんスピードを上げて大学まで帰りました。大学に着いた後も、Yは何も話さず、ただ

「今日のことは忘れよう。」
そう言って、せっかく撮った集合写真も消してしまいました。


Yがあの時、何に気がついて声を上げたのか、卒業してしまった今ではもうわかりません。
ただ、あれから10年以上たった今でも、あの男の子は今日も1人であの山道を登っているのだろうか、と時々思い出します。

 

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