投稿者:斉藤剛史
フロッピーディスクの怪
都内に住むE君は会社で見慣れない物を発見しました。
失踪した先輩の机を整理していて見つけたのですが、最初はそれが何なのかわかりませんでした。写真を撮って質問サイトで訊いたところ、フロッピーディスクという昔のパソコンの記憶媒体だとわかりました。
先輩が失踪した理由を解き明かす鍵が隠されているかもしれない。そんな風にちょっと探偵っぽい気分になったE君でしたが、会社内にはフロッピーに対応している古いパソコンはありませんでした。高校の先輩でパソコンオタクのO君を頼ってみたところ、O先輩自身が古いパソコンを所有しているとのことでした。
E君は早速フロッピーを送って解析を依頼しました。
返事はすぐに返ってきました。数日後の夜にE君のスマホに着信があり、中身はE君の会社のフロアの見取り図と、意味不明な数字の羅列でした。
E君は首をかしげました。E君の会社に該当のフロアはなかったのです。フロッピーの中にあったのは地下三階の見取り図でしたが、エレベーターは地下二階までしか通じていません。
「この数字を読み上げるから、そのとおりに階数ボタンを押してみなよ」
O先輩がそんなことを言ってきたので、E君はそうしてみました。
エレベーターが下降し始めました。地下二階を通り過ぎてもまだ電光表示板には下向きの矢印が出ており、驚いたことにエレベーターは本当に地下三階に着床しました。ドアが開くと、何とも言えない嫌な臭いのする真っ暗な空間が広がっていました。
「この見取り図によると倉庫みたいだね」
O先輩の声がスマホから聞こえてきましたが、E君はそれよりも倉庫内から聞こえてくる女性の声が気になっていました。
暗号のようなボタン操作を行わなければ行けない閉鎖空間に人がいるわけがなく、E君はぞっとして引き返そうとしました。ところがエレベーターのドアが開きません。後ろからは何かを引きずるような音が聞こえてきます。E君は半狂乱になってO先輩に助けを求めましたが、なぜか先輩は無言でした。
E君はそのまま気を失い、翌朝エレベーターの中で倒れているところを発見されました。
夢でも見たんだろうと周囲から言われたE君でしたが、不思議なことがひとつありました。O先輩に連絡を取ったところ、電話など掛けていないと言うのです。そればかりかフロッピーの解析すらまだ出来ていないという返答でした。
「それ、燃やしてください」
E君はO先輩にそう言いました。
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