2019年10月15日 更新

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夏の怪談コンテスト応募作品NO17_終わったはずでは

ぱどにゃんこ夏のキャンペーン 最恐「実話怪談コンテスト」応募作品を一挙ご紹介!

 

投稿者:松本エムザ

終わったはずでは

栃木の日光と言えば、世界遺産の東照宮やいろは坂が有名であるが ──
その二地点を結ぶ、国道120号線の荒沢橋という橋のたもとに祀られている「荒澤地蔵尊」には、哀しい過去にまつわる逸話がある。
かつてこのお地蔵様は橋の下の旧道に祀られていたのだが、橋が掛けられ新道が開通されると、長い間野晒しにされていた。

その後橋の近辺では、列車の脱線や作業用トロッコの事故などが相次ぎ、幼い子供を含む多くの死傷者が出た。もしやこれは置き捨てられたお地蔵様の祟りではないかと、
地元の人たちによってお地蔵様は引き上げられ、立派なお堂と共に新たに祀られるようになった。以来、事故はぱったりと治まったという。

息子がアイスホッケーのチームにいた小学生の頃、この道をよく利用した。東照宮からいろは坂までの道のりに、アイスリンクがあったからだ。
荒沢橋付近の道路は、緩いカーブを描いている。お地蔵様のお堂は、いろは坂から中心街に向かう道路の左手にある。自宅からリンクへ向かう際は、
反対車線を挟んで道路の右手にお堂を見て走ることになる。


その日も私は、朝練の息子をリンクへ送リ届けるために、ハンドルを握っていた。走り慣れた道だからと、少々油断をしていたのかもしれない。
他の車両も見当たらない薄暗い明け方の道で、私はついウトウトとしかけてしまった。そのとき ──


「わぁっ! なんだあれ!?」


後部座席の息子の声で、ハッと意識を取り戻した。


「今の見た? 白い人影がいくつもお地蔵さんのところに!」

お化けだ幽霊だと、興奮する息子。
それよりも私には、息子のひと声で目を覚まし、事故を起こさないで済んだことの方が重要だった。

これも、お地蔵様が護ってくださったからかも ──。そう思っていたのだが……。



地元の知人に、この話をしたところ、

「お堂と反対側の道を走っていたんでしょ? じゃあちょっと違うかも」
と、彼女は顔を曇らせた。

彼女曰く、あの道ではお堂がある側の道路ではなんの問題もないのだが、私が走っていた反対側の道では、不思議なことが度々起きているという。
運転中突然眠くなったり、何かの叫び声を聞いたり、白い手がいきなり現れてハンドルの操作を誤らせようとしたり。

「『何か』が事故を起こさせようとしているのかもしれないって、もっぱらの噂なの」


『何か』とはいったい ──。


祟りがまだ続いているのだとは、信じたくない。

 

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