2019年10月15日 更新

キャンペーン

夏の怪談コンテスト応募作品NO8

ぱどにゃんこ夏のキャンペーン 最恐「実話怪談コンテスト」応募作品を一挙ご紹介!

 

投稿者:緒方あきら

熊本県のある山奥に、鍾乳洞のなかに神社が立っている場所がある。

近所に住むNさんは、小さいころから両親に神社へ頻繁に連れられて、お参りをしていた。山道は険しかったが、鍾乳洞は少し涼しく、洞内やそこから見える遠くの景観も楽しめた。


この神社は山深い場所にひっそりと建っているだけに参道も険しく、細くクネクネと曲がりくねっていた。本堂に向かう道を進んで左手には海が、右手には急峻な斜面が見える。
通うだけでも一苦労な場所であるが、その斜面の景色が一際変わっているらしい。


Nさんいわく、斜面には何百体ものお地蔵様が安置されているのだ。驚くべきことに、地蔵たちは一体一体姿形が違い、様々な姿形をしていた。およそ二百年前に、数十年かけて作られたものだという。

参道に屋根などなく地蔵は雨ざらしになっており、時にコケむしていたりヒビが入っていたりするが、曲がった参道を無数のお地蔵様が囲むようにしている様はなんとも異様であった。

一説にはこの地域一帯の地鎮のために建てられた地蔵たちであるというが、このお地蔵様たちに近年、奇妙なことが起きていた。参道の斜面を埋め尽くしたお地蔵様の首が、無くなっていくのである。ひとつ、またひとつと地蔵の首は消えていき、今ではかなりの数のお地様が首が失なっていた。

もちろん風雨にさらされ続け、長いときを経て老朽化したのではないかという説もある。しかし、それならばなぜいつもお地蔵様の首だけが壊れていくだろうか。

首を失ったお地蔵様だけが増えていくのには、なにか別の理由があるのではないか。
そもそも二百年前、どうしてこの場所にこれだけの数のお地蔵様を安置せねばならなかったのか――。

話をしてくれたNさんが、大きく息を吐いて言った。



「子供のころはあんなに首なし地蔵はなかったと思うんですよ。それがいつの間にかどんどん増えていって。このまま全部のお地蔵様の首がなくなってしまったら、何か良くないことが起きるんじゃないかと不安なんです」



Nさんの話では、今も首を失ったお地蔵様は増え続けているのだという。

 

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