2019年10月15日 更新

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夏の怪談コンテスト応募作品NO24_「四階には止まれません」

ぱどにゃんこ夏のキャンペーン 最恐「実話怪談コンテスト」応募作品を一挙ご紹介!

 

投稿者:未成年星人

「四階には止まれません」

 高校二年生の私の地元は東京です。おばけや心霊とは無縁に、朝も夜も夏も冬も光と人であふれています。そんな街で、思い出すたびに寒気がする、謎にまみれた恐怖体験をしました。

 

 ある夏の蒸し暑い日でした。都会の女子高生らしく、最近流行りのシカゴピザを食べようと、友達と二人で渋谷を歩いていました。耳障りな蝉の声と、絶えず交差する人混みに疲れて、ひたすらに目標の店を目指しました。その店はある小さなビルの四階にあり、外に貼ってあったポスターから間違いなく開店していることが確認できました。さっそく私たちは店に入ろうと思い、エレベーターに乗り四階のボタンを押しました。冷房がなく外よりも暑苦しい空間でした。乗っていたのは私たちだけでした。

 

「四階です。開く扉にご注意ください」

 エレベーターの扉がそのまま店の扉となっているレストランでした。ところが、そこには客どころか店員一人いませんでした。

 

「すみませーん」

 声をかけても、そこにあるのは静寂だけでした。仕方がないので私たちは店を変えることにして一階の地上に戻りました。ですが、またあの暑さと人混みの中を歩くことが億劫で、ポスターには開店と書いてあるものですから、もしかしたらあのガランとした店は私たちの見間違えだったのかもしれない、と冗談込みで再びじっとりとしたエレベーターに乗りました。扉が閉まり、私は先ほどよりも少し慎重に四階のボタンに触れました。

 

 乾いた、無機質な声でエレベーターが言いました。

「四階には止まれません」

 えっ、と思いもう一度ボタンを押してみても、

「四階には止まれません」

 さっきまで感じていたエレベーターの暑さが嘘のように寒く感じられました。不気味な空間から早く抜け出したくて、私は反射的に「開く」ボタンを押しました。しかし、開かないのです。焦った私たちはとりあえず順番にすべてのボタンを押していきました。するとなぜか二階のボタンだけが点灯し、エレベーターが上がり始めました。安堵よりも、私たちにとっては未知の階である二階に何が待っているのかわからない恐怖に襲われました。

 

 

「二階です。開く扉にご注意ください」

 扉が開き、何が待っていようがエレベーターから早く抜け出したかった私たちは無心に降りました。すると、不思議なことにそこは未知の二階などではなく、もといた渋谷の地上でした。謎めいた感覚と恐怖を残したまま、私たちは無言で駅に戻りました。

 

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