投稿者:タケシ猫
"都内に住む主婦Sさんは旦那さんとネットで知り合いました。最初は共通の趣味などもあって話も合い、仲が良かったそうです。しかし結婚するとすぐに旦那さんは独善的な本性をあらわし、Sさんは早くも結婚をしたことを後悔しました。常日頃から旦那の言葉の暴力にさらされ、時折実際に手を出されることもありました。
このままでは何より子供が危ないと考えたSさんは離婚を申し出ましたが、旦那は頑として応じず、Sさんはついに旦那を無き者にする計画をたてました。
とはいえ普通にそれをしたのではSさんと子供の将来まで消え失せてしまいます。Sさんは一計を案じ、旦那が心臓が弱いことと、ホラーが死ぬほど苦手なことを利用しようと考えました。幸いなことにSさんには親友がひとりおり、その女性は劇団に所属していました。
Sさんの計画はいたってシンプルです。Sさんの親友Hさんに幽霊を演じて貰って旦那を脅かし、心臓麻痺を起こさせようというものでした。
SさんとHさんは綿密にシナリオを練って、当日は念のためSさんが指示を出せるようにと、Hさんのツテで通信機器と隠しカメラまで用意しました。
計画実行の日、Sさんは別室で待機してカメラをチェックしていました。お酒を飲んで前後不覚になった旦那にHさんが扮した幽霊が迫ります。さすがに劇団員だけあって迫真の演技でした。
Sさんもせっかく用意した通信機器の存在を忘れてしまうほど、指示の必要もない真に迫った演技でした。血みどろの白い着物を纏ったHさんはどこからともなく現れただけでなく、空中を漂ってさえ見えました。
隣室から旦那の大きな叫び声が聞こえました。カメラを視ていると旦那はベランダに飛び出し、そのまま勢い余って地上に落下しました。
(終わった……)
Sさんが安堵の笑みを浮かべたとき携帯が鳴りました。Hさんからの着信でした。
「ごめん、遅れたっ。今から大急ぎで行くから待ってて」
Hさんの言葉に驚いてSさんは慌ててカメラをチェックしました。モニターに映った隣室には誰もいませんでした。ベランダへの窓が開け放たれ、カーテンが風に揺れているだけでした。
「考えてみれば、あんな身勝手な男が他で恨みを買っていないはずがない。あの白い着物の女性は女たちの恨みの集合体だったんじゃないかって、そんな気がする」
Sさんは後でHさんにそう言ったそうです。Hさんの友人から、そんな話を聞かされました。
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