2019年10月15日 更新

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夏の怪談コンテスト応募作品NO42_地元の海

ぱどにゃんこ夏のキャンペーン 最恐「実話怪談コンテスト」応募作品を一挙ご紹介!

 

投稿者:秋元円

地元の海

札幌で美容師をしている三十代の男性、Cさんの体験談。


ある夏の夜、Cさんが自室のベッドで寝ていると、


カチャリ……


入り口のドアが開く音で目が覚める。

(こんな時間に一体、誰だ?)

いぶかりながら、Cさんが寝ぼけ眼で入り口を確かめると、わずかに開いたドアの隙間から廊下の明かりが室内に漏れ入っていた。

(何だか気持ち悪いなあ、嫌だなあ)

息を潜めてドア付近を凝視する。


「あっ!」


その直後にCさんは気付いてしまう。入り口のすぐ近くに誰かが立っていたのだ。逆光のせいで曖昧な部分もあったが、誰かがそこに立っているという事実は間違いなかった。
その影を見てCさんは、妹か? いや……違う。それにしては黒過ぎる! と感じた。

隙間に立つその誰かの影が、全ての光をのみ込んでしまうブラックホールのように、果てしなく暗く沈んで見えたのだ。

するとその影が、一瞬のうちにするりと室内に侵入し、あり得ない速さでCさんに近づいてきた。


「うわっ!」


とっさに目を閉じて、両手で顔を防御する。

その数秒後、嫌な気配がどこかに過ぎ去ったことを体感して恐る恐る目を開けるCさん。室内には自分しかいなかった。

入り口のドアの隙間は心なしか、最後に見たときよりも微妙に開いているように見えた。
念のため、Cさんはその直後に隣室の妹に聞いてみたという。

「今、俺の部屋に来なかったか?」

「お兄ちゃんの部屋に? 何でよ。行くわけないじゃん」

冷たく答えられて終わった。その翌日、両親に確認しても、もちろん昨夜はCさんの部屋には訪れていない、とのことだった。

そこでCさんは、およそ一週間前に体験したある出来事をふと思い出す。
数人の友達と、地元の海でレジャーを楽しんだ帰りのことを。

日も暮れて、辺りは真っ暗だった。運転席に座ったCさんが駐車場に止めた車の前照灯をともした直後、目の前をすうっと黒い影のようなものが横切ったのだ。

そのときは普通に「人」が歩いていたのだ、と思うことにしたのだが、自室に侵入してきた不気味な「影」のことを考えると、Cさんは連れて帰ってきてしまった、としか思えなくなったという。

 

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