2019年10月15日 更新

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夏の怪談コンテスト応募作品NO29_川沿いの廃墟

ぱどにゃんこ夏のキャンペーン 最恐「実話怪談コンテスト」応募作品を一挙ご紹介!

 

投稿者:相沢泉見

川沿いの廃墟

私は子供の頃C県に住んでおり、近所にはO川という小さな川が流れていた。

その川沿いに、廃墟の群れがあった。同居していた祖父母の話によれば、むかし川沿いに幹線道路が敷かれる予定があり、付近の住民が立ち退いた跡だという。道路建設の話は立ち消えになり、廃墟だけが残ったようだ。

祖父母を含めたお年寄りは、私たち子供に向かってよくこう言った。


「あの廃墟には『ヘビ女』の霊が出る」

小さい頃はその話がとても怖かったが、十歳を越えると平気になってきた。

おそらく、大人たちへのちょっとした反抗心もあったのだろう。同じように「ヘビ女なんて嘘だ」と思った子は私の他にも数人おり、みんなで廃墟を探検してみようという話になった。
探検に参加した子は五人。廃墟群に行ってみると通路が狭く、一列になって進むことにした。

並ぶ順番は、じゃんけんで決めた。先頭は真っ先に負けたA君だ。みんな強がっていたが、やはり一番前というのは勇気がいる。

ちなみに、私は前から二番目を選んだ。実は探検に行く前、祖父母からこんな話を聞いていたのだ。


「ヘビは一番目の人の足音で目を覚まし、二番目で身構え、三番目の人に噛みつく」


ヘビ女など信じていなかったが、万が一のことを考えた。一番前はとにかく怖い。三番目は噛みつかれる。二番目なら安全だろうという魂胆だ。

全員が並び終えたところで、探検に出発した。

とにかく、不気味だった。放置された家は朽ち果てているのに、残されているプラスチック製品が妙に色鮮やかなのが気持ち悪い。

何かがカタリと音を立てるたびに、私たちは大いに驚いた。しかし、特に何もないまま辺りを一周してしまった。


「何だ、ヘビ女なんていないじゃん」

異変を感じたのは、A君がそう呟いた直後だ。

斜め上から、細長い影が飛んできた。その影は私の身長の三倍ほどの長さがあり、異様なほど黒い。


「あっ」

思わず声を上げた私の目の前で、黒い影はA君の首に巻きついた。


「おい、変な声出すなよー」

しかし次の瞬間、A君は何事もなかったように私を振り返った。
黒い影は跡形もなく消えていた。私は何かの見間違いだと思って「ごめん」とA君に謝った。



それから一週間後、A君は突然の事故で命を落としてしまった。

トラックとぶつかって、タイヤと車体の間に首を挟まれたらしい。A君の遺体の首には、どす黒い跡がぐるりとついていたという。

 

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