2019年10月17日 更新

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夏の怪談コンテスト大賞受賞作品

ぱどにゃんこ夏のキャンペーン 最恐「実話怪談コンテスト」応募作品を一挙ご紹介!

 

投稿者:GR

これは25年程前の話で、その頃の私は内装職人をしていた。


場所は宇都宮市の旧斎場だった。当時の斎場は市の中心地にも近く、古ぼけてこじんまりしていた。そのため、増改築工事が行われる事になった。


工事日程では前日に土間のコンクリート打ちが終わっているので、親方と現場に行った。

まずは現場事務所へミーティングに行くと、監督と助監督がいつにない雰囲気で話し合っている。親方が何かあったのか訊くと、昨日打ったコンクリートに異変があったらしい。


見るが早いと現場に行くと、結構広い土間の中央付近にそれがある。


細く小さな裸足の右足の足跡で、なぜか女性の足だと直感した。



周りには何もない一面灰色のせいか、
虚無的で退廃感がただよい、
ポツンと一つだけ寂しそうに見える。




監督と助監督は、昨日帰る時はなかったし、あの場所までどうやって行ったのか、なぜ裸足で片足なのか、二人とも不思議がっている。 とりあえず監督が施工した土建屋を電話で呼び出す。30分ほどで土建屋が到着し、足跡を見るなり表情が変わった。ベテランの土建屋は足跡の凹み具合から大体の体重も分かるそうで、これは間違いなく人間が乗った跡だという。



「これはまずいよ、直してくれないかな。」

当惑した監督が土建屋に頼む。



「触るのもイヤだ。」

土建屋は顔を青くし一蹴する。



「そこを何とか頼むよ。別途請求出していいからさ。」

監督は手を合わせ、何とか土建屋をなだめようとしている。


しかし、土建屋は逃げるように帰ってしまった。


自分が見たのはここまでだ。土間がトラブっていては仕事にならず、その日は帰った。後日工事に行くと足跡はなくなっており、助監督が「監督に無理やり直させられた。」とこぼしていた。

現在では新斎場に移転して数年が経ち、この旧斎場はなくなってしまった。

 

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