2019年10月15日 更新

キャンペーン

夏の怪談コンテスト応募作品NO46_リレー

ぱどにゃんこ夏のキャンペーン 最恐「実話怪談コンテスト」応募作品を一挙ご紹介!

 

投稿者:yukari

リレー

「トイレの花子さんって定番だけどさ、そう言えばうちの学校って、体育館に花子さんが出るって噂がなかった?体育の授業や部活でバスケやバレーをやってると、いつの間にか一人増えてたとか、そういう噂あったよね?」

「あったあった!でもそれ、花子さんっていうより、座敷(ざしき)童(わらし)っぽくない?子供らが遊んでると、気が付くと一人増えてるってやつ!」

「やめて!本当に出たらどうすんのっ?」
 
深夜一時過ぎの母校の体育館、私と桜が真夏の定番怪談話で盛り上がっていると、怖がりの薫が震えて舞にしがみついた。

「よしよし、大丈夫よ。…あ~、それにしても久しぶりに走ったな。私たち皆、体育祭は必ずリレーの選手に選ばれてたよね」優しい舞はさりげなく話題を変える。

高校時代、バスケ部のレギュラーだった私たちは皆、揃って俊足だった。悪戯好きな四人は悪さをしても逃げ足も速かった。

卒業して三年目の夏、四人でプチ同窓会をした。酔っ払った勢いで大胆不敵な桜が


「高校の体育館に行ってみない?」


と言い出し、元イタズラ少女達は即同意。深夜の体育館に忍び込み、久しぶりにバスケをやった後、コンビニで買った缶ビールとおつまみで再び宴会開始。


「ねえ、今からリレーしない?」


お調子者の桜が、飲み干したビール缶を高く掲げた。



再会の昂揚感と酔っ払った勢いに任せ、深夜のリレーは始まった。
体育館の四隅に四人がそれぞれ立つ。ビール缶をバトンに桜、私、舞、薫の順番で走った。酔っていた四人は箸が落ちても可笑しい年頃に戻り、ゲラゲラ笑いながら、フラフラ千鳥足で走った。

リレーは続く。いつまでも。…いつまでも?…え?

ピタリ。走っていた私は舞にバトンを渡す前に立ち止まった。四人の中でお酒と数学に最も強かった私の頭が、急に冴えた。


「…ねえ、何でリレーが続くの?」


 一気に血の気が引き、震える声で言った。

「何でって?」まだ気付かない桜が呑気に訊く。

「最初に走った桜が、元々いた角にはもう誰もいない筈よ。だから、四番目に走った薫がバトンを渡す相手はいない筈。なのに…」


恐怖の余りそれ以上喋れなかった。


…そう、私は見たのだ。一気に顔色が変わった三人を見ると、恐らく彼女たちも。

確かに、薫はバトンを渡していた。そこにいる誰かに。そして、その誰かは走って桜にバトンを渡していた。


「きゃあぁぁぁっ~!」


絶叫しながら、私たちは三年ぶりに逃げ足の速さを全力で発揮した。

 

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