2019年10月15日 更新

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夏の怪談コンテスト応募作品NO27_赤い顔の女

ぱどにゃんこ夏のキャンペーン 最恐「実話怪談コンテスト」応募作品を一挙ご紹介!

 

投稿者:鷲田ヨウ

赤い顔の女

当時、大学1年生の夏休み。有り余る時間と活力を持て余していた私は、友人を誘い地元にある心霊スポットへ肝試しに行くことにした。


そこは東京都某所にある元外国人寮の廃墟。10年以上前に2名の死傷者が出る凄惨な火災が起き、現在は立ち入り禁止の廃墟となった地元では有名な心霊スポットだった。


私は今まで心霊現象を体験した事がなく、特に信じている訳でもなかったので遊び半分で廃墟へと向かっていた。

到着し辺りを捜索していると、ライトに照らされた立ち入り禁止の看板が目に止まった。私は一瞬足を止めるが、恐怖より好奇心が勝ちロープを跨いで敷地内へと進んだ。

草木が茂る坂道を進むと、木々の間から大きな3階建の建物が顔を覗かせた。至る所の窓ガラスは割れ、外壁は所々黒く焦げている。

正面の入り口は扉が壊れており容易に入れた。



中に入ると、焼け焦げて骨組みだけになった天井の隙間から月明かりが覗いていた。
真っ黒く焦げた部屋。ひび割れた内壁。黒くくすんだ階段。
火災の凄惨さを目の当たりにした私達は、自然と交わす言葉は少なくなっていた。

焼け残った部屋には古びた衣類や携帯電話の明細書が散乱しており、時間の止まった生活感は恐怖へと変わっていた。



だが何も起きる事はなく3階まで早々と散策を終え、私と友人は肩透かしを食らった気分になっていた。
気の緩んだ私達は「全然怖くなかったな」などと談笑をしながら階段を降り始めた。

ふと、耳に刺さる鈍い音が聞こえた。



ゴツ ゴツ



まるで何か硬い物同士がぶつかっているような音を聞き、振り向くと友人が固まっていた。
そして友人は「やばい」と一言呟き、慌てて階段を降りていった。

血の気の引いた私は「どうした」と尋ねると、友人は小声で「顔の赤い女が靴で壁を蹴ってる」と言った。



ゴツ ゴツ ゴツ



先程より間隔の短い鈍い音が聞こえ、何も視えなかった私は恐怖心に駆られ無我夢中で階段を降りた。



呼吸を荒立たせながら、ようやく1階の玄関にとつくと「大丈夫か?」と友人に尋ねた。
友人は肩で息をしながら階段の方へと振り返ると、顔を痙攣らせながら友人は言った。



「階段の上からこっち見てる」



ガン ガン ガン ガン ガン



今までにない激しい音が階段の上から響き、私は呻き声を上げながら建物を後にした。



あの日から10年経った今でも、友人はあの赤い顔の女の姿が今でも思い出してしまうと言っている。

 

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